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デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律
1 インターネットの普及に伴い、消費者取引のデジタル化が進展し、特にデジタルプラットフォーム提供事業者が介在する取引市場が急速に拡大しています。デジタルプラットフォーム(DPF)の利用は消費者に大きな利便性をもたらしますが、他方で、悪質な販売業者等が容易に参入できてしまうこと等によるトラブルも増加していたところです。そこで、DPFを利用する消費者の利益を保護することを目的として、平成3年4月に「デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」(以下「取引DPF法」)が制定されました(施行日は、令和4年5月1日)。
2 取引DPF法の概要は以下のとおりです。
(1)取引DPF法は、いわゆる「BtoC取引」(事業者と消費者間の取引)を対象とします(例えばフリーマーケットサイトやネットオークションのようないわゆる「CtoC取引」(消費者間の取引)は対象としません。)。
BtoC取引では「販売業者等」「取引DPF提供者」「消費者」が関係主体となります。取引DPF提供者としては、例えばAmazon.com 楽天市場、Yahoo!ショッピング、出前館やウーバーイーツ、宿泊予約サイト等がイメージされますが、本法は、DPF提供者の規模を問うておらず、小規模なものであっても適用されます。また、個人事業主が事業のために取引を行うときは、個人であっても「消費者」にあたらないとされています。
(2)取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務(3条)
BtoC取引の適正化及び紛争の解決の促進に資するため、取引DPF提供者には、①販売業者と消費者との間の円滑な連絡を可能とする措置を講ずること、②販売条件等の表示に関し消費者からの苦情を受けた場合に必要な措置を講ずること、③販売業者に対し必要に応じ身元確認のための情報提供を求めること、について努力義務が課せられ(3条1項)、内閣府令の定めるところによる開示も義務付けられました(3条2項)。
(3)取引デジタルプラットフォームの利用の停止に係る要請(4条)
内閣総理大臣は、重要事項(商品の安全性に資する事項等)について著しい虚偽・誤認表示があり、かつ、販売業者が特定不能などにより表示の是正が期待できない場合、取引DPF提供者に対し、当該商品に係る当該DPFの利用の停止等を要請することができるとされました。
(4)販売業者等情報の開示請求(5条)
消費者は、販売業者等に対する金銭債権(損害賠償等)を行う場合に必要な範囲で、取引DPF提供者に対し、販売業者の情報の開示を請求できる権利を創設しました。
(5)官民協議会(6条ないし9条)、内閣総理大臣に対する申出制度(10条)
3 ところで、取引DPF法の細目は政省令に委任されていますが、なかでも法3条3項「内閣総理大臣は、取引DPF提供者が行う前二項の措置に関して、その適切かつ有効な実施に資するために必要な指針を定めるものとする」に基づく指針が実務的には重要です(消費者庁HPでは令和4年5月1日現在、同年2月24日に公表された「指針(案)」が公開されており、「指針」は法施行日後に正式に策定・公表されるとしています。)。指針(案)では、取引DPF法3条3項に基づき取引DPF提供者が行う措置に関し、いわゆるベストプラクティスという形で取引DPF提供者に求められる取組が具体的に示されています。これらは、努力義務の指針ではありますが、義務を怠り長期間放置しているような場合には、企業評価や、損害賠償法上の違法評価に影響することも考えられます。取引DPF提供者としては、コンプライアンスの観点から自社がベストプラクティスを実践できているか見直す必要があるでしょう。
客員弁護士 小濱意三
2022年4月30日執筆
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