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成年年齢引き下げで変わること/変わらないこと
【成年年齢を引き下げる民法の改正】
これまで民法では、「年齢20歳をもって、成年とする」(民法4条)と規定されていました。この「20歳」を「18歳」に改めるというのが、今回の民法改正です。民法以外にも、さまざまな法律で「成年」や「未成年」という言葉が登場するのですが、この民法の改正を受けて、他の法律の「成年」や「未成年」の意味するところもすべて20歳から18歳へと変わることになります。
【未成年者の民法上の地位】
民法上、未成年者は、①親権者の同意がない契約を取り消すことができるという形で保護され、また、②親権者の親権(子供の財産管理と監護養育)に服するという法律上の地位を有しています。これは、判断能力等が未熟である未成年者を保護するための制度です。
今回の改正は、成年となる年齢を引き下げるものであり、未成年者を保護する制度そのものが変わるわけではありません。したがって、売買契約や雇用契約など、未成年者との間で何らかの契約を締結しようとする場合には、これまでと同様の配慮および注意が必要となります。
【民法以外の法律の改正】
民法に限らず、さまざまな法律で「未成年」などの文言が用いられていることは前述しましたが、法律の条文では、具体的な年齢、例えば「20歳」や「18歳」というような文言が用いられていることも多くあります。今回の民法の改正により、法律で「未成年」と記載されているものは「20歳未満」から「18歳未満」と読み替えることとなりますが、「20歳」や「18歳」と具体的年齢が記載されているものは文字通りの年齢を指すだけですから民法改正の影響を受けるものではありません。
ただし、今回の民法改正に合わせて、これまで「20歳以上」としていた条文を「18歳以上」に改正したり、「未成年者」としていた条文を「20歳未満の者」に改正したりと、さまざまな法律の年齢要件等が変更されたため、話が複雑になっています。
結局、年齢要件等をチェックするためには、該当の法律を確認するほかなく、「未成年」と記載されていれば「18歳未満」を意味し、「20歳」など具体的年齢が記載されていればその年齢を意味すると理解しておけば間違いはありません。例えば、労働基準法(今回の民法改正に伴っての改正はありません)では、年少者に関する規律(56条以下)において、「満13歳」、「満15歳」、「満18歳」、「未成年者」などという文言が登場します。ここでは、「未成年者」を「18歳未満の者」と読み、あとは記載された年齢どおりを意味すると理解すれば良いということになります。
【20歳のまま変わらないもの】
20歳が維持される主なものは以下のとおりです。
・喫煙や飲酒の年齢(「20歳」としていた未成年者喫煙禁止法や未成年者飲酒禁止法の条文が維持され、未成年者という記載がある法律の名前のみ改正)。
・競馬や競輪等の公営ギャンブルの投票(「未成年者」としていた競馬法等が「20歳未満の者」に改正)。
・養子をとることができる年齢(「成年」としていた民法792条を「20歳に達した者」に改正)。
・国民年金の被保険者資格(「20歳以上」としていた国民年金法の条文が維持)。
このほか、細かいところでは、自動車の大型中型免許等の取得可能年齢、特別児童扶養手当の支給対象年齢、船長や機関長の年齢、猟銃の所持の許可などが変更なく現状維持となります。
【年齢が上がる時期】
最後に、年齢がいつ上がるのかということについて触れておきます。
誕生日を迎えて1つ歳を重ねるというのが一般的な感覚ですが、法律上は、誕生日の1日前(より正確にいえば誕生日の1日前の24時)に年齢が1つ上がります。
期間の計算方法は民法に規定があり、通常は初日を算入しない=翌日を起算日とするのが原則となっているのですが(民法140条)、年齢の計算については、「年齢計算ニ関スル法律」という、明治時代にできた条文がたった1つしかない法律があり、そこでは、「出生日より起算する」という取り扱いが定められています。そして、1年の期間は起算日に応答する日の前日に満了することになっていますので(民法143条2項)、起算日である誕生日の前日に1年が満了するという計算となります。4月1日生まれの人は3月31日に、4月2日生まれの人は4月1日に年齢が上がるわけですが、小学校や中学校の学年が、4月1日が誕生日の人と4月2日が誕生日の人との間で線引きされている理由もここにあります。
弁護士 尾山慎太郎
2021年11月30日執筆
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